2020-03-01から1ヶ月間の記事一覧

自粛要請+補償要求=人質外交

自粛要請をめぐるやり取りが難航する昨今ですが、このような自粛要請は昭和天皇崩御のときにもありました。当時は街中が自粛ムード一色でした。阪神淡路大震災と東日本大震災のときは政府の働きかけがなくても自然と自粛ムードが日本中に広がりました。でも…

私に指示を出してください

新型コロナウイルスの感染急増を懸念して都道府県の各自治体が市民に対して不要不急の外出を自粛するよう要請しています。もうすっかり定着した「要請」という言葉。検査結果の「陽性」という言葉と並んで聴覚的に敏感に反応することとなった「ヨウセイ」で…

『第1章:マージナル・マンからグローバリゼーションへ①』(ワニ先生の修士論文)

第1節:マージナル・マン理論の展開 (1) ジンメルのストレンジャー (2) パークのマージナル・マン (3) ストーンクウィストのマージナル・マン (4) その後の展開 (5) 三つの論点 第1節:マージナル・マン理論の展開 1928年の論文「人間移動とマージナル・マ…

葡萄酒色の海(Wine-Dark Sea)

ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』は多くの読者を魅了してきました。物語であると同時に詩的に完成された作品ですが、その解釈をめぐって様々な意見があることで知られるもののうちの1つが「葡萄酒色の海」という描写です。 眼光輝くアテネは一行のために…

差別意識と差別行為の因果関係

2017年10月27日のワールドシリーズ第3戦でカブスのダルビッシュ投手からホームランを放ったアストロズのグリエル選手がベンチで両目を指でつり上げるポーズをして差別表現だとして非難されました。その後、グリエル選手は謝罪したものの5試合出場停止処分を…

気象予報士の自由化

天気予報は当たることもあれば外れることもあります。朝の天気予報を信じて傘を持たずに出かけて後で悔しい思いをしたことありませんか。当たるも八卦当たらぬも八卦と自分に言い聞かせるという意味において、天気予報は占いのようなものです。しかし、わた…

学問の不自由

憲法第23条は「学問の自由は、これを保障する」と規定しています。では「学問の自由」というときの「学問」とは何なのでしょうか。これを考える前に、まずは大学教員(これには教授や准教授と同様に講師も含まれる)と小中高教員の違いを明らかにしておきま…

大学の専門学校化

「最近の大学生は勉強しない」とか「学生ではなく生徒だ」という理由をもって「大学の専門学校化」を主張する論文等を多く見かけるようになりました。確かに大学生の質は大問題です。しかし大学の質の低下を学生だけのせいにして、それを論文に仕上げて研究…

それでも時間は平等に与えられている

「時間は全ての人間に平等に与えられている」という名言がありますが、これに異議を唱える人たちもいます。例えば、寿命が40歳の人と80歳の人では与えられている時間は倍も異なるわけだから、時間は平等に与えられていないではないかと。しかし「時間は全て…

主観的ではダメなのでしょうか

数年前のワイドショーにて、和歌山カレー事件裁判の被告である林眞須美死刑囚に対する有罪無罪をめぐる議論の中で、コメンテーターの1人である弁護士の大澤孝征氏が「証人による証言は客観的証拠ですから」と述べていました。1人の証人では有効ではないかも…

「尊厳」について考えてみました⑤

尊厳死は殺人であり自殺です なんだか尊厳死に対して批判的なことばかり述べているように思われるかもしれませんが、正直申しましてボクは尊厳死に対して全く批判的ではないし、個人の選択肢として人が納得されるのであれば、それは大いに結構なことだと思い…

「尊厳」について考えてみました④

なぜ尊厳死という言葉を使うのでしょうか? 脳死というのは、脳によって人間の死を判断することです。脳がダメになったら全部ダメなのです。脳が全ての基盤なのです。こういうのを唯脳論というのでしょうか。クジラやイルカを殺してはいけない理由は彼らが知…

非科学的ではダメなのでしょうか

鉱物採掘やダム建設といった人間活動が原因となって起こる地震があると『アメリカ地震学会』が報告しています。言い換えれば人為的な地震があるということです。でも全ての地震が人為的というわけではありません。コロナウィルスが武漢のウィルス研究所で兵…

「尊厳」について考えてみました③

なぜ尊厳死なのでしょうか? 尊厳のある生とはいったいどういうことなのでしょうか。そしてそのような生はパスタのような管でつながれた瞬間から失われてしまう程度の生なのでしょうか。よく「周りに迷惑を掛けたくないから」というのが尊厳死を選択する理由…

モナリザもモーツァルトも環境問題である

環境問題について考えた結果、わたしたちはとても大切なことに気づいてしまいました。それは、環境問題というときの「環境」とは何であるかという問いです。先の記事ですでに述べたように、国連や環境省は「環境」の定義を明らかにしていません。あまりにも…

地震は環境問題か否かという問い

高校の地理教科書を見ると、環境問題と比べて具体的で他人事ではなく身近な問題として認識されているようです。世界的にも有名な日本の自然災害である「地震」や「津波」についての詳細な記述が多いのが特徴です。地震のしくみと津波のしくみに関して1ページ…

地球の問題は日本の問題ではないのか

「現代社会」では、そこで扱われた環境問題が自分の身近な問題でなく「世界の問題」であり、具体的な危機感を認識することが困難で、そのために環境問題に対してどのように対応すべきかに関する提言のようなものはあまり見られませんが、この点については「…

「尊厳」について考えてみました②

何が「尊厳」なんですか? 尊厳死が「尊厳を伴う死」であるのに対して、そうでないものを「尊厳を伴わない死」言い換えれば「みっともない死」であることを確認しました。そしてここで安楽死が安楽な状態へ向けた「苦しみからの解放」であるのに対して、尊厳…

環境問題は教科書でどのように位置づけられているか

環境問題について調べているうちに、いろいろなことが分かってきました。正確には、わたしたちが環境問題にどう向き合っているかの一端をここで紹介できたらと思います。環境問題に関する日本語書籍は非常に多く、書店等を見ると絵本を含む入門的な本から専…

「尊厳」について考えてみました①

「尊厳死」って何ですか? 「尊厳をもって」とか「敬意を表する」という表現が何気なく使用されますが、そもそも「尊厳」とか「敬意」とは何でしょうか。話の取っ掛かりとしてまずは「尊厳死」と「安楽死」について考えてみましょう。 そもそも尊厳死と安楽…

可能性ゼロの世界

最近は「死刑」を覚悟で人を殺すケースが多いですね。相模原事件にしても京都アニメ事件にしても、容疑者または被告は「死刑」を怖れていないようですよね。そんな人たちを「死刑」で罰することに意味があるのでしょうか。無いですよね。そろそろ日本も「終…

単一民族国家じゃなかったの?

「単一民族」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。日本はずっと「単一民族」の国家であるとされてきました。でもよく考えるとアイヌ民族もいるし琉球民族もいるし、在日朝鮮人の方々もいるし、いろいろな外国出身の方々がいるわけで。で、実は「単一民…

「芸」と「術」と「道」の交錯

アメリカの大学に籍を置いていた頃、「martial arts」という科目があったのに驚きました。「武芸」と「武術」と訳されますが、もう1つ大切な訳語があります。「武道」です。話を分かりやすくするために「武術」と「武道」の違いから始めましょう。以下。 ま…

芸術的な自然の不自然さ

先日、教え子に「文明って何ですか?」と質問されました。授業で「自然と文明についてまとめなさい」という課題を出されたとのこと。ボクなりに答えてみました。以下。 文明との対置を考えるのであれば、自然とは、形の有る無しにかかわらず、ただ「あるがま…

エコなゴミ

以前パプアニューギニアに行ったときのことです。まだ20代でした。セピック川というのがあって、その川沿いの辺鄙な村で1週間自給自足生活を体験したことがあります。電気もガスも水道もありません。当時のボクは自給自足の術を知らないから、あらかじめ持参…

『第1章:マージナル・マンからグローバリゼーションへ②』(ワニ先生の修士論文)

第2節:グローバリゼーションとマージナリゼーション (1) マージナル・マンとグローバリゼーション (2) マージナルからマージナリゼーションへ 第2節:グローバリゼーションとマージナリゼーション マージナル・マン理論は、1920年代の制限立法以降、移民…

『マージナリゼーションとしてのグローバリゼーション:引用参考文献』(ワニ先生の修士論文)

Antonovsky, Aaron (1956) "Toward a Refinement of the Marginal Man concept,"SF 35. Appadurai, Arjun (1990) "Disjuncture and Difference in the Global Cultural Economy," in M. Featherstone (ed.), Global Culture: Nationalism, Globalization and…

『マージナリゼーションとしてのグローバリゼーション:章立て』(ワニ先生の修士論文)

序章 第1章:マージナル・マンからグローバリゼーションへ 第1節:マージナル・マン理論の展開 (1)ジンメルのストレンジャー (2)パークのマージナル・マン (3)ストーンクウィストのマージナル・マン (4)その後の展開 (5)三つの論点 第2節…

『マージナリゼーションとしてのグローバリゼーション:序章』(ワニ先生の修士論文)

エアポートの出国審査カウンター。ここで出国スタンプを押された瞬間から、次の入国審査を受けるまで、われわれは何処にも存在しないことになる。まさに、「In-Between」あるいは「マージナル」な状態である。自分を証明する唯一の手段がパスポートとなる。…

中国の高校教科書にみられる環境問題

以下は、中国の高校で使われている『地理』の教科書から、環境問題に関わる部分を抜き出し、検討したものである。『地理』はすべての学年で必修であり、1年生用、2年生用、3年生用の教科書があり、5〜6つの章がある。そのうちの一部が環境問題に関係し…