中国における環境教育の持続可能性について

近年、環境教育は世界中の国々の教育システムで大きな注目を集めている。ますます深刻化する環境状況に直面して、環境教育は一般的に根本原因から環境問題を改善し、生態学と社会の持続可能な開発を確実にするための最良の方法であると考えられている。現在、中国では、あらゆるレベルの政府、教育管理部門および環境保護部門の共同の努力により、中国における環境教育の新しい章が作成されている。

中国では1970年代以降の工業化に伴って環境教育が始まった。当時の環境は開発に対立していた。先進国は開発を重視し、途上国は豊かな環境に恵まれていた。しかしその後、途上国も開発を重視し始めたが、先進国は環境を保護する方向に向かった。先進国は開発によって環境に悪影響を与えた反省から環境保護に力を入れることになった。途上国はまだ開発途上にあったので開発に積極的で環境保護に消極的だった。当時は開発と環境は対立するものだった。

ところが1987年のブルントラント報告(環境と開発に関する世界委員会)で「持続可能な開発」が提唱されたことで事態が変わった。この報告で提唱された定義は「現在の世代の要求を満たしつつ、将来の世代の要求も満たす開発」というものだった。現在の開発も可能にしながら将来の環境も可能にする。将来の環境に悪影響を与えないような現在の開発ということで「持続可能な開発」と言われ始めた。これは、かつて対立していた環境と開発が、双方可能なものとして作られた解決案だった。

持続可能な開発が生まれたことによって、それまで環境問題が地球の一部の問題であったものが、地球全体の問題へと変わっていった。開発には環境問題が付随するからだ。持続可能な開発は南北問題、貧困問題、人権問題など様々な問題とも接することで地球規模の問題に発展した。持続可能な開発以前の環境教育は環境を保護することに集中していたが、それ以後の環境教育は開発と妥協しながらの環境問題を考えることになった。

しかしこの持続可能な開発には多くの批判もある。環境と開発が本当に共存できるものなのかどうか。環境保護に傾倒していた頃の議論と持続可能な開発においてなされる議論にどのような違いがあるのか。持続可能という魔法のような言葉によって開発が見過ごされる事態は良いことなのか。このような批判に最先端の環境教育理論はどのように主張するのか。

持続可能な開発以前とそれ以後で環境教育がどのように進展したかを検討しなければならないだろう。そして現在の環境教育の最前線を確認することにより、環境教育の問題点を見きわめることが可能になる。環境意識教育の発展が持続不可能で悲観的かつ悲惨なものであるという悲観論を乗り越える政策課題の持続可能性を検討することが研究課題だ。

中国では観光産業の発展に伴ってエコツーリズムが盛んになっている。環境を保護することを目的に観光客を集める。しかしそこには豊かな都市による貧しい地方を利用した関係がある。環境教育の進歩した都市に対して、地方ではまだまだ環境教育に遅れがある。それでもエコツーリズムが成立する背景には格差社会のひとつの側面がある。都市と地方の格差には実感させられる。そしてそれを解消するための環境教育指導者不足は明らかである。専門的知識を持った環境教育指導者を育てるために大学が力を入れているが、そこではどのような教育が提供されているかを検討することは重要である。

加えて、中国においては環境教育は大学などの上級学校から始まり、高校から中学へ、中学から小学校へと広がっていったという経緯がある。つまり、当初の環境教育は専門的な知識を必要としたこと、すぐに実行できる知識を必要としたことを理由に、大学を中心とする高等教育での役割が大きいからだ。環境教育は大学をはじめ学校教育だけでなく、民間団体やNGOなどボランティアによる自然体験なども盛んであるが、指導する人材が不足しているため、大学は環境教育に力を入れ始めた。

以下、「大学での最新動向」において展開される議論について触れておきたい。理論的意義と実用的意義についての2つの局面について、まずは理論的意義について考えてみたい。

まず第1に、大学生のための教育分野の構築がどのように推進されているかを確認しなければならない。現在、中国の大学生の環境教育は最先端にあり、政府の行政部門、企業、大学生のかなりの数が大学生の環境教育について曖昧ではあるが理解をしており、彼らは環境に対する意識を不可欠であると考えている。大学生の環境教育の現状を明らかにすることを目的とし、インタビューまたはアンケートを行わなければならないだろう。その理論的判断とその解釈は大学生教育の研究観点から有益であると言えよう。

第2に、大学生の環境教育理論がどれだけ充実され、環境教育研究の範囲が広がっているかを確認しなければならない。21世紀に入ってから、グリーン開発は世界のすべての国の開発のコンセンサスとなった。国連の「持続可能な開発のための2030年のアジェンダ」は、エコ環境の具体的な目標を明確に示している。中国における大学生の環境教育を研究対象とすることには大きな意義と必要性があると言えよう。しかし、環境教育に関する現在の国内研究者の関心は、大学生の環境教育に及ぶことは少なく、探求および議論の対象となることも少ない。持続可能な開発の観点からの大学生のための環境教育に関する多面的なレビューと研究は、大学生の環境教育理論の充実度を確認するのに役立つだろう。

第3に、環境問題を解決するための理論的支援がどれだけ提供されているかを確認しなければならない。「第13次五カ年計画」に入って以来、中国は生態文明(生態[エコロジー]を守る文明。中国において、環境や資源の保護を意識すること)の建設を容赦なく実行し、社会の持続可能な開発を促進し、そして学生と自然の調和のとれた発展の近代化の新しいパターンを加速している。「環境」、「持続可能性」および「生態文明システム改革」は、中国の将来の社会開発の基調およびパターンとなっている。持続可能な開発の観点から大学生のための環境教育に関する研究を実施することは、持続可能な開発の背景の下で環境教育問題を探究するのに役立ち、環境問題を解決するための理論的支援を明確にできるだろう。

次に実用的意義について考えてみたい。

まず第1に、大学生の間の環境保護に対する意識を確認しなければならないだろう。中国における生態文明の構築と持続可能な開発のための有資格労働者がどれだけ育成されているか、環境保護に対する彼らの意識がどれだけ向上しているか、彼らが生活環境に注意を払い、正しい生態学的価値を確立することに貢献しているか。意識、環境問題を解決し、経済発展から生じる環境問題を解決する能力を持つ優秀な人材教育がなされているか、などを確認しなければならないだろう。

第2に、大学生の教育実践の分野を確認しなければならないだろう。大学生教育は実践的な科学であり、大学生教育研究の実践的理論を形成し、実践の指導を強化することが達成されているのか。持続可能な開発の観点から大学生の環境教育を研究内容として取り入れ、大学生の教育実践の探究を明らかにし、大学生の教育実践が環境教育に拡張され、大学生の教育実践が達成されているかを明らかにしなければならない。

第3に、持続可能な社会開発を大学教育を通じて確認しなければならないだろう。中国の経済社会開発は包括的かつ深化する改革の危機的な時期に入り、国家レベルでは生態文明とグリーン開発の概念で経済建設が主導されてきた。中国の大学生のための環境教育の問題と開発経験の分析に基づいて、彼らの目標戦略がどれほど達成され、グリーン開発の生態学的価値を形成しそして社会をどれほど促進しているかを確認しなければならない。

持続可能な開発の要求から出発し、大学の現在の環境教育の必要性を分析し、中国の大学の環境教育の現状を理解し、既存の問題と大学の環境教育の発展に影響する好ましくない要因を分析する必要もあろう。2013年に国連ユネスコによって杭州会議が開催されたが、そこでの杭州宣言において「持続可能な開発のための文化」が発表され、「環境の持続可能性を促進する文化」を構築することが提言された。これを受けて中国では持続可能な開発教育のために具体的にどのような文化構築が検討されているかを見極める必要がある。中国の大学で環境教育の実践的な仕組みを構築し、政府、地域社会、社会的勢力、メディアなどさまざまなレベルからの対策に注目することが求められよう。