駅弁とモンドセレクション

子供の頃のおやつとしてボクもお世話になったギンビスの『たべっ子どうぶつビスケット』があったので、手に取って最近はどうなってるのかなと確かめていたところ、パッケージに「モンドセレクション金賞受賞」なる文字が目に入りました。製造者側とすれば「モンドセレクション金賞受賞」という付加価値によって消費者が金科玉条のごとくその表示とその表示が意味するものをワケも分からず賛美して購入するにちがいないと思ったかどうかはさておいて、消費者側のうちのどれくらいの割合が「モンドセレクション金賞受賞」という得体の知れない事実を認識したうえで『たべっ子どうぶつビスケット』を購入するというのでしょうか。

われわれは『たべっ子どうぶつビスケット』のパッケージを開けた途端に飛び出してくる動物型のビスケットの各々にその動物の名前が英語で書かれていることに一種の興奮を覚えているのであって、決して「どれどれ、モンドセレクション金賞受賞の味とはどんなものであろうか」などと感慨に浸りながら薄焼き具合がどうだのバター風味のパンチが欠けるだの「コアラのマーチ」の方が上だのと審査員を気取っているのではないということなんです。そもそも「モンドセレクション」は相対基準ではなく絶対基準を採用しているために審査基準をクリアするのは全く困難ではないようです。

それはさておき、崎陽軒のホームページに「定番の駅弁、シウマイ弁当」とあるとのこと。そうですよね。崎陽軒シウマイ弁当は「定番の駅弁」ということで常識的な世間一般人の間で流通しているようです。でもさすがに果てしなき「旅情」に浸りながら「崎陽軒シウマイ弁当」を食べる人はいないと思います。それゆえに「崎陽軒シウマイ弁当」は「旅の途上」という文脈から切り離された状況において食べる限りにおいて「駅弁」ではなく「崎陽軒シウマイ弁当」なのであります。

駅弁を介して地域振興をする人々、モンドセレクション受賞を介して賞品プロモーションをする人々、地域の文化歴史を介して世界遺産登録に躍起になる人、みな同じにおいがしますね。あるものを他のものと区別することによって多くの概念が誕生し、それら概念が整理されることによってわたしたちはモノの見方に強弱や奥行きを付与することができることでしょう。違いが分かることも大切だけど、異なっていて関係なさそうなものの中に類似性を見出すというのも大切なことかもしれません。「たべっ子どうぶつビスケット」と「コアラのマーチ」、みなさんはきちんと区別できるでしょうか。