王子様

王子様といいAbcdeといい、キラキラネームをめぐる議論は賛否両論いろいろありますね。息子に「悪魔」と命名した「事件」はもう20年以上前になりますが、未だに記憶に残ってます。アメリカのサイトで調べたのですが、Abcdeという名前は1800年代にすでに5人存在したそうです。

生まれてきた子供に好きな名前をつける権利が親にどれくらいあるのかという問題ですが、これは言い換えれば親権がどの程度認められるものなのかという問題と言えるでしょう。自己決定権は自己のみならず子供にも及ぶものなのかという問題として考えることもできるでしょう。ボクはこの問題は2つに切り離して考えるべきだとずっと考えてます。つまり、①親の権利をどこまで認めるべきかという問題と、②名前を含めて自分に関する事柄に変更を加えることがどこまで許されるかという問題。この2つです。

②からいきます。名前に関しては確か変更可能ですよね。自分の名前が気に入らないという理由だけで変えることができたら社会が混乱するから、それなりの要件がありますね。周囲にその名前がどれくらい認知されているかを検討する材料として、過去5年間くらいにわたってその名前が名宛て人として記された手紙類を提出すれば名前変更可能ではなかったかと思います。今はどうなってるか確かではないですが、名前変更はそれなりに可能です。

ボクは基本的に自己決定権を支持してます。他者危害原則というのがあって、他人様に迷惑をかけなければ何をしても構わないということです。他人様に対する迷惑がどの程度のものなのかというのは、また別の議論になってしまうので、ここでは自己決定権のみに絞らせてもらいますね。

先日『バイキング』という昼の情報番組で美容整形の是非を取り上げてました。若い世代に「美容整形をどう思いますか」と尋ねたところ約6割が賛成で、親世代に「自分の娘が美容整形することをどう思いますか」と尋ねたところ約6割が反対でした。この結果を受けて美容整形医が「若い世代は情報に精通しているが、親世代は古い価値観」のようなコメントを残してました。お気づきでしょうけど、同じ質問ではないからアンケート結果を受けての分析コメントとしては無効ですよね。親世代の人たちも、おそらく自分たち自身の美容整形には肯定的なのではないでしょうか。そして若い世代の人たちも、おそらく自分が親になって娘が美容整形したいと言ったら否定的なコメントを残すのではないでしょうか。したがって、若い世代と親の世代の情報共有や情報精通を示したコメントは全く根拠のないものですよね。イライラしながら番組を見ていたら、司会者の坂上忍が「若い子たちも親になったら違うこと言うのかもしれませんね」とフォローしてたのでホッとしました。

話を戻します。ボクは美容整形は別に反対ではありません。タトゥーやピアスのみならず、化粧するのもファッションで着飾るのも自由でしょう。同様に名前を変更したり親を変更する自由はあると思います。この見解にイライラする人たちは、なぜイライラするのかを論理的に考えて結論を導くことが求められると思います。

次に①の「親の決定権」ですが、結論から述べれば、現状においては好きな名前を命名する権利は親にあると考えています。ボクの名前もそうやって付けられたわけだし、嫌なら成人してから変更すれば良いだけのこと、あるいは変更しやすい制度にしてあげるべきだと思います。そうでないと、親権の定義が困難になると思うんですよね。王子様だろうが悪魔だろうがAbcdeだろうが、他人が「センスない」とか「子供がかわいそう」とか言ったところで、その他人は王子様や悪魔君に対して何の責任も負うわけではないですよね。命名した親が責任を持てば良いだけのことだと思います。

親なら何をしても良いのかという問題は、たとえば教育を理由にして体罰に及べば暴行罪や傷害罪が問われるわけですけど、命名権に対しては法の抜け穴になっているからでしょうか、裁判所は「権利の濫用」を理由に対処するしか手の打ちようがないというのが現状みたいです。実際、悪魔君の裁判は原告勝利しましたね。ただし、その後、あの親は裁判勝利したのにもかかわらず「悪魔」ではなく「阿久」で届けてますね。単に目立ちたかっただけなのでしょう。

命名権の問題をちょっと応用したものに「デザイナーベイビー」っていうのがあります。遺伝子操作で自分の好きな容姿の子供を作るというもの。実際に行われているし、反対意見続出ですが、反対意見のほとんどは「不自然である」という1点に絞られます。クローン技術もそうですが、こういった科学技術の発展に否定的なコメントを出す人は、iPS細胞についてはどう思われているのでしょうか。あれほど不自然なものはないと思うのですが。デザイナーベイビーがダメでiPS細胞が良いと言える根拠はどこにあるのでしょうか。甚だ疑問でしかたありません。

ボクはiPS細胞には大賛成です。だからデザイナーベイビーもクローンも美容整形も化粧もファッションで着飾るのも、全部賛成です。クローンやデザイナーベイビーに関しては、人間が生命や自然をどこまでコントロールして良いものだろうかという批判があります。そういった批判をする際には、きちんとiPS細胞や、それこそ近代西洋医療についても同様に議論するべきだと考えてます。それが「正義」というものだと信じてます。

ボクは、正義というのは「何が正しいことなのか」ではなく「正しいと考えることを貫く」ことだという定義を採用してます。自分の家族が被害者になったときは「死刑賛成」で、加害者になったときは「死刑反対」だとしたら、それは正義ではない。不自然であるという理由で美容整形に反対であるならば、iPS細胞についても反対であるべきではないでしょうか。そうでなければ、他の根拠を考えなければならないでしょう。