これでいいのか鉄道営業法

鉄道営業法というのがなかなかの曲者で、鉄道業界ではこれをどうとらえているのだろうかと、ずっと疑問に思ってました。最近ではすっかり当たり前になった女性専用車両にも関わる条文なのですが、まずは鉄道営業法の第三十四条をご覧になってください。

第三十四条「制止ヲ肯セスシテ左ノ所為ヲ為シタル者ハ十円以下ノ科料ニ処ス」
(一)停車場其ノ他鉄道地内吸煙禁止ノ場所及吸煙禁止ノ車内ニ於テ吸煙シタルトキ
(二)婦人ノ為ニ設ケタル待合室及車室等ニ男子妄ニ立入リタルトキ

分かりやすく現代語訳すると

第34条「制止するのを聞き入れることなく以下の行為をなす者は80円以下の科料に処す」
(1)駅その他の鉄道敷地内にある喫煙禁止の場所および喫煙禁止の車内において喫煙したとき
(2)女性のために設けられた待合室および車室などに男性がみだりに入ったとき

明治33年発行の条文というから、いまから119年前にできたものなのであるがゆえ「80円以下の科料」となってます。罪刑法定主義の原則があるので、車内で喫煙しても「80円以下の科料」で済むみたいですね。もっと徴収しても良いと思うのですが、なぜ改正しないのでしょうか。しかも、よく読むと、車内で喫煙したぐらいでは即科料とはならないのです。条文にあるように「制止するのを聞き入れ」なかった場合のことですから、制止されて聞き入れれば罰則なし。まあそのかわり鉄道営業法は適用できない代わりに軽犯罪法や迷惑条例違反で罰せられることになるとは思いますが。

それはよしとして、もっと気になるのが2項の「女性のために設けられた車室」です。「車室」には女性専用車両も当然に含まれると解されます。そこで「制止するのを聞き入れることなく」女性専用車両に乗車したら「80円」を徴収されるのかどうか調べてみました。すると、鉄道会社は口を揃えて、女性専用車両は「車室」にはあたらないと言ってます。車室にはあたらないから80円取られることもないということですよね。よく考えてみたら、もし仮に女性専用車両が「車室」にあたるとすると、この条文自体が憲法14条の「すべて国民は法の下に平等であつて」に触れ、女性専用車両男性差別をしているから憲法違反にならないのでしょうか。それを避けるために鉄道会社は女性専用車両を「車室」とは認めないのでしょうか。そのあたりが疑問です。もっと疑問なのは、だったらなんで条文改正しないのかということ。しかも80円のままで。